●●● 第4章 花屋修業時代大阪編
55回 [12月のセリ]
12月に入ってくると、市場の様子が変わってきます。
「年末モード」になり、かなりの活気です。
12月には、それまで無かった特別な年始向けの
「松の市(まつのいち)」
「千両市(せんりょういち)」
「梅の市」 などの 「特別市」が設けられるのです。
市のスタートは、市場の常務(多分)の発声からです。
こんなに沢山の種類の松を見たのは、初めてでしたね~。。。
「若松」や「枝若松」は定番ですが、
「根引き松」「大王松」「五葉松」「瑞光松」「寿松」 etc‥
それに、松に「オン(雄)」と「メン(雌)」があるのも初めて知りました。
「オン松」「メン松」と言います。
門松には、「オン」と「メン」の両方を入れるのだそうですよ。
そんな事も、初めて知ったのでした。。。
松や千両、南天以外にも、知らなかった花材が色々と年末には出てきます。
「万年青(オモト)」「葉牡丹」「仏手柑」「裏白」 などなど‥
特に「仏手柑(ブッシュカン)」 を見た時は驚き、
「あれ、何ですか~!!」 って、叫びましたよ。。。
インド原産の柑橘類らしいのですが、
「仏様の手に見える」 という事で、こんな名前がついてるそうです。
知らない花材や種類にも驚き、戸惑いましたが、
それよりも、もっと大変だったのが、
「12月の相場」 なのでした。
12月になって、セリ場全体は多少の興奮状態に入っています。
或る日、赤バラを購入したくて、
「8千円」の値段を指で示しました。
すると、
売り子が
「それ、ついてんのか!?」(1万がついてるのか)と怒声と共に聞いてきます。
私はタジタジです。(正直ただの8千円のつもりでした。)
すると、
「顔を洗って、出直して来い!!」みたいな事を言われちゃうのです。
恥ずかしさで、顔が真っ赤になる 初々しい私なのでした。
12月の相場はいつもの、2倍、3倍になったりするのです。
その後「ボタン式のセリ」になって、
「キッツ~イ 言葉」も言われなくなりましたが、
あの、張り詰めた緊張感や、プロフェッショナル達が集まる仕事の場は
本当に大好きなものでしたね。
今はアマチュアもいっぱい増えたセリ場で、
緊張感も今一になって来ている様な気がします。
<つづく>
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昔が良かったなんて言っているのは、年寄り臭くって嫌なんだけど
セリについては、ちょっとそう思っちゃう私です。
でも、「機械セり」になって利点も出てきているのは、確かなのです。
●ある意味、「公平」な仕入れが出来る様になりました。
●また、「恐ろしい競り上げ合戦」も無くなりました。
●「売り子の押し付け」も無くなりました。
(手ゼりの時は、要らない商品を押し付けられる時があったんです。でも今は機械なのでボタンを押さない限りは、商品を持ち帰らなくても良くなったのです。)
でもでも、やっぱり、
あの「緊張感」と 「仕事人達の仕事振り」 は今とは雲泥の差で‥
若い時に、あんな場で仕事が出来た事を
本当に良かったと、感謝する現在なのでありました。
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